現在勤めている会社を退職後、次の仕事が決まっておらず、生活費に不安がある人もいるでしょう。失業保険を活用すると収入を補填できますが、受給要件を満たしつつ所定の手続きを行う必要があるため、事前に制度の内容を理解することが大切です。
本記事では、退職後に失業保険を受け取るための条件や受給額の目安、申請から受給までの5ステップなどを解説します。退職後の生活に不安を感じている人は、ぜひ確認してください。
退職後に失業保険を受け取る条件
まずは、退職後に失業保険を受け取る条件として、以下の2点を解説します。
- 一定期間の雇用保険の加入実績がある
- 働く意思と能力がある
失業保険の受け取りを検討している人は、自身が受給対象に含まれているかを改めて確認しておきましょう。
一定期間の雇用保険の加入実績がある
失業保険を受給するには、会社員として雇用保険に加入した実績が求められます。原則として、退職日以前の2年間に通算12ヶ月以上の加入が必要です。
倒産や解雇などの会社都合で退職した人(特定受給資格者)や、病気やケガなどの正当な理由により自己都合退職した人(特定理由離職者)は条件が緩和されます。これらの人は、退職日以前の1年間に通算6ヶ月以上加入していれば受給可能です。
また、1ヶ月を雇用保険の加入期間として計上するには、以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
- 賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある
- 賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある

失業保険の受け取りを検討する際は、会社員としての勤務期間を振り返っておきましょう。
働く意思と能力がある
失業保険は、あくまで「就職する意思があり、その能力があるにも関わらず、職業に就けない状態の人」を支援する制度です。そのため、積極的に就職活動を行う姿勢が求められます。「働きたくないけど失業保険は受け取りたい」という考えは認められません。
また、以下に当てはまる人も失業保険を受給できません。
- 病気やケガですぐに働けない場合
- 妊娠・出産・育児ですぐに就職できない場合
- 学業に専念する場合
働く意思はあっても、健康状態や家庭の事情によっては失業保険を受け取れない点に注意しましょう。
失業保険の受給額
失業保険を受け取る際は、支給期間中の1日当たりの受給額と、所定給付日数(失業保険を受け取れる日数)が決められます。
1日当たりの受給額は、以下の式で求められます。
- (退職前6ヶ月間の給与総額)÷180×給付率
給付率は、原則として退職前6ヶ月間の給与総額に応じ、50〜80%の範囲で決定されます。給与が少ない人は給付率が高く設定され、給与が多い人は低くなる仕組みです。
所定給付日数は、受給者の退職理由や雇用保険の加入期間によって異なります。詳細は次項で解説します。
【ケース別】失業保険の所定給付日数
ここからは、以下の3つのケースに分けて、所定給付日数を解説します。
- 自己都合退職者
- 就職困難者
- 特定受給資格者
各ケースの所定給付日数を理解することで、失業保険の額を把握でき、収入の見通しを立てやすくなります。失業保険を受給する予定の人はぜひ確認しておきましょう。
自己都合退職者
自己都合退職者とは、個人的な事情により、自己都合で退職した人を指します。自己都合退職者の所定給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて以下のように決まります。
| 雇用保険の加入期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
雇用保険の加入期間が10年延びるごとに、所定給付日数が増えるイメージです。
就職困難者
就職困難者とは、身体や精神などの障がいがあるため、就職が難しい人です。就職困難者の所定給付日数は、雇用保険の加入期間と本人の年齢に応じて以下のように決まります。
| 退職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | |
| 1年未満 | 1年以上 | |
| 45歳未満 | 150日 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
通常の自己都合退職者に比べて、就職困難者は所定給付日数が多くなります。
特定受給資格者
特定受給資格者とは、倒産や解雇、事業所の廃止など、会社都合で退職した人です。上司からのハラスメントや、給与の未払いを理由に退職した場合も、該当する可能性があります。
特定受給資格者の所定給付日数は、雇用保険の加入期間と本人の年齢に応じて、以下のように決まります。
| 退職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
| 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
自己都合退職者や就職困難者に比べて、所定給付日数が細かく定められます。該当する人は、失業保険の受給前に日数を入念に確認しておきましょう。
退職後から失業保険を受け取るまでの流れ
ここからは、退職後に失業保険を受け取るまでの流れを、以下の5ステップで解説します。
- 会社から離職票を受け取る
- ハローワークで失業保険を申し込む
- 雇用保険説明会へ参加する
- 失業認定日までに求職活動を行う
- 失業認定日にハローワークへ来所する
手順を頭に入れることでスムーズに受給できるため、事前に把握しておきましょう。
1.会社から離職票を受け取る
失業保険の申込をする際は「離職票」が必要です。会社が労働者の希望を受けて発行するため、退職する前に必ず発行を依頼しましょう。
離職票は、基本的に退職日から10日〜2週間後に自宅へ郵送されます。退職後から2週間以上経過しても届かない場合は、会社に問い合わせましょう。
また、離職票が届いたら、離職理由や賃金額などに間違いがないか確認し、ある場合は会社に再発行を依頼しましょう。離職票の記載をもとに失業保険の額が決まるため、間違いがあると正しい額を受給できない可能性があります。
2.ハローワークで失業保険を申し込む
離職票が届いたら、以下の必要書類を準備して、自身の住所を管轄するハローワークで失業保険を申請しましょう。
- 離職票
- 証明写真2枚(縦3cm×横2.4cmで、上半身の正面が映っているもの)
- 本人名義の預金通帳、もしくはキャッシュカード
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードや通知カードなど)
書類に不備があると申し込みできず、失業保険の受け取りが遅れるため、ハローワークへ行く前にすべて揃っているか確認しましょう。
また、手続きが完了すると「雇用保険説明会」の日程を案内されるため、よく聞いておきましょう。雇用保険説明会の詳細は次項で解説します。
3.雇用保険説明会へ参加する
失業保険を申請してから数日後、雇用保険説明会が行われるため参加しましょう。今後の求職活動の進め方や、失業保険を受け取る手順などを説明されます。また、失業保険の受け取りに必要な「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が渡されます。
説明会に参加しないと失業保険を受給できません。やむを得ない事情で欠席する場合は、事前にハローワークへ連絡し、指示を仰ぎましょう。
4.失業認定日までに求職活動を行う
失業保険を申請してから、基本的に4週間に1度の間隔で「失業認定日」が訪れるため、その日までに求職活動を行いましょう。原則として、失業認定日までに2回以上の求職活動を行うことで、失業保険を受け取れるようになります。
求職活動の例としては、以下が挙げられます。
- 雇用保険受給者説明会への参加
- ハローワークでの職業相談
- 求人への応募
- 指定のセミナーの受講
ハローワークへ行かずに求人サイトを閲覧したり、知人に仕事の紹介を依頼したりする行為は、実績として認められません。
求職活動に該当するか判断できない場合は、ハローワークに確認してみましょう。
5.失業認定日にハローワークへ来所する
失業認定日になったらハローワークへ行き、失業認定申告書に求職活動実績の詳細を記入して、雇用保険受給資格者証とともに提出します。ハローワークの職員が提出書類を確認し、前回から今回の認定日まで失業の状態にあり、かつ求職活動実績があるかを確認します。問題なければ、今回の認定日までの日数分、失業保険の支給が決まり、数日後に口座へ振り込まれる流れです。
その後も失業保険を受給する場合は、求職活動を継続し、次回の失業認定日にハローワークで手続きを行います。これを繰り返し、所定給付日数分の失業保険をすべて受け取ると支給完了です。
失業認定日にハローワークへ行かないと、その期間の給付は受けられないため、スケジュール管理を徹底して来所を忘れないようにしてください。
退職後の失業保険に関する注意点
ここからは、退職後の失業保険に関する注意点として、以下の4点を解説します。
- 申請後にすぐ受給できない
- 受給中の就労は制限がある
- 65歳以上で退職すると給付の内容が異なる
- 不正受給は避ける
受給開始時期の勘違いや、法令違反による処分などを防ぐために、注意点をよく確認しておきましょう。
申請後にすぐ受給できない
ハローワークへ必要書類を提出しても、失業保険はすぐには受給できません。ハローワークへ申請した後、7日間の「待機期間」を過ごす必要があります。待機期間とは、その人が本当に失業の状態にあるかをハローワークが見極める期間です。
また、個人的な事情で自己都合退職した人は、待期期間の後に「給付制限期間」も過ごさないと失業保険を受給できません。給付制限期間は原則1ヶ月ですが、離職日や過去の自己都合退職の回数によっては、2~3ヶ月間になる可能性もあります。
待期期間や給付制限期間に該当する日は、失業保険が支給されないため、その分の生活費を確保しておきましょう。とくに自己都合で退職した場合は、失業保険を受け取れるまで数ヶ月を要する可能性があるため、貯金額に気を配る必要があります。
受給中の就労は制限がある
失業保険の受給中も、アルバイトやパートでの就労は可能です。しかし、4時間以上就労した場合、その日の支給が先送りされます。
たとえば、所定給付日数が90日であり、1回目の失業認定で28日分(4週間分)の失業保険がもらえるケースを考えてみましょう。通常であれば、1回目の失業認定後、残りの所定給付日数は62日(90日-28日)になります。
しかし、最初の失業認定までに4時間以上労働した日が1日あると、1回目に受け取れる失業保険の額は27日分(28日-1日)になります。そして、受け取れなかった日の分は先送りになるため、残りの所定給付日数は63日(90日-27日)になるという仕組みです。

なお、1日の労働時間が4時間未満の場合でも、給与額によっては失業保険が減額または不支給になる場合があります。1日の給与と失業保険の合計が、賃金日額(退職前6ヶ月間の給与の総額を180で割った額)の80%を超える場合、そのラインになるまで失業保険が減額されます。
また、給与のみで賃金日額の80%を超える場合、その日の失業保険保険は全額不支給になるため、注意が必要です。

受給期間中に就労する場合は、労働時間だけでなく給与額にも注意しておきましょう。
また、アルバイト・パートの所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上継続して雇用される見込みがある場合は「就職した」とみなされます。この場合、失業保険の受給資格は失われ、所定給付日数が残っていても受け取れなくなるため注意しましょう。
65歳以上で退職すると給付の内容が異なる
65歳以上の時点で退職し、雇用保険の被保険者であった場合は「高年齢求職者給付金」の対象となります。通常の失業保険と異なり、一時金としてまとめて支給される給付です。
支給額は被保険者期間に応じて決まり、1年未満なら失業保険の日額の30日分、1年以上なら50日分となります。通常の失業保険より、基本的に受給額は少なくなります。
65歳の誕生日が近い人は、会社を辞める日によって給付の内容が変わる可能性があるため、退職時期を慎重に調整しましょう。
不正受給は避ける
ハローワークに申告すべき内容を偽って失業手当を受け取ろうとすると「不正受給」に該当します。具体的には、以下のケースが当てはまります。
- 受給期間中の就労時間や賃金額を偽って申告した
- 求職活動実績の内容を偽って申告した
- 失業の状態でなくなったにも関わらず、申告しなかった
ハローワークに不正受給を確認されると、それまでに受け取った失業保険をすべて返還しなければなりません。悪質な場合は、不正受給した額の2倍を追加で納付する必要もあります。その後の受給資格も失われるため、不正受給は避けましょう。
制度の詳細を把握して失業保険をスムーズに受け取ろう
本記事では、退職後に失業保険を受け取るための条件や受給額の目安、申請から受給までの流れなどを解説しました。
失業保険は、一定期間の雇用保険の加入実績があり、再び働く意思と能力を持つ人が受けられます。受給するには、必要書類の準備やハローワークでの手続き、定期的な求職活動などが求められるため、受け取るまでの流れはあらかじめ確認しておきましょう。

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